吹奏楽のソロコンテスト

先日、レッスンに携わった生徒さんが2つのソロコンテストに出場し、2人とも審査員特別賞を頂いたとの報告がありました。
このコンテストというのは、吹奏楽連盟や学校主催の「基本的に吹奏楽部で使用する楽器によるソロコンテスト」というもの。
つまり、管打楽器とコントラバスに参加資格があるというものです。


僕自身学生の頃にこのようなコンテストがあるとは知らず、この数年生徒さんから相談されて初めて存在を知ったような状態なのですが、最近はSNSでも「ソロコンテストを受けたいが何を弾けば良いか」という質問が増えて来て、選曲などを含め対策を考えるようになってきました。
しかし、コントラバスで管打楽器が主体となると大きなハンデを背負って出場する事になります。


まず、《コントラバスはソロ楽器ではない》ということ。

近年でこそパラパラと超絶技巧を披露するコントラバス奏者が増えてはいますが、あくまでもプロレベルでの話。
吹奏楽部で限られた時間でしか練習出来ない学生さんたちにソロの曲を演奏するような技術を求めるのは正直酷というものです。
増して、音大受験を考えている学生ならともかく、吹奏楽部レベルで高い音域まできちんと弾ける子はほとんどいません。


次に《管楽器に比べてコンテスト向けの曲が圧倒的に少ない》ということ。
音高生、音大生くらいになればコントラバスのソナタや協奏曲などがありますが、これらの曲目で弾くのは吹奏楽部ではほとんど目にする事もないようなハイポジション。そして中高生でも演奏出来るような曲となると今度は音域が低すぎて聞き取りにくかったり、または地味で映えなかったりするのです。

さらに《審査員に弦楽器を理解出来る人が少ない》ということ。
吹奏楽コンクールでもそうなのですが、こうしたコンテストでコントラバス奏者が審査員に加わる事はなぜかほとんどありません。
僕も声がかかった事はありません。

コンテストを受けた生徒から「ボウイングを見直したほうが良い、と書かれた」と連絡が来た事がありますが、この書き方だと「ボウイング」が弓順の事なのか、それとも右手の弓遣いの技術の事なのかも分かりませんし、「どのように見直したら良いのか」も書いてない。僕が教えていてどちらも特に問題を感じなかったので、その方に何がいけなかったのか伺いたいくらいでした。

先日SNSで「コントラバスのオリジナル曲を弾いたら、審査員に『そんな曲を弾いてないでバッハを弾きなさい』と書かれた」という話も見かけましたが、この審査員は「バッハはコントラバスに曲を書いていない」という事実を知らないのでしょうか。それとも、調弦も違うチェロの曲を演奏するべき、という考えなのでしょうか。これは想像に過ぎませんが、一部の審査員には「コントラバスの講評にはそれらしい事を書いておけば良い」という空気があるように思います。

もちろんこのような審査員ばかりではありません。
「音が硬いなあ」と思った生徒さんに「コントラバスらしい音を出すように」と的確な意見を書かれた方もいらっしゃいましたし、僕が普段演奏させて頂いているシエナ・ウインドオーケストラのメンバーは日ごろから「コントラバスだとここはどう演奏するの?」「学校を指導しているんだけど、コントラバスにはどのような練習をさせれば良いの?」などかなり質問をしてきて知識を得ようと努力されています。
先日あるアンサンブルコンテストに出場した生徒が「シエナの方から講評で褒められました」と言われたので、そのメンバーに連絡したところ「一人だけ奏法のアプローチがきちんとしていました」と評価を頂いたこともありましたから、彼らは正しい評価が出来ると思っています。

こうした事情から、僕は「ソロコンテストを受けたい」と相談されると、まず「勝ちに行くのか、コンテストの空気を経験出来れば良いのか」を確認します。勝ちに行くならそれなりのレベルの選曲をしなければなりませんし、こうしたソロコンテストの事情を知らせ、受ける前の段階で状況が厳しい事を伝える必要があります。

「ソロコンテストの前に一度レッスンを受けたい」と連絡頂き、行ってみたら基本がまるでなっていない場合もよくあります。そんな時は素直に「これでは先には進めないと思う」と伝えます。こんな時、早い段階できちんと基礎から教えていればなあ、と思う事もよくあります。ですから、新入生が入部したらすぐにレッスン講師を呼ぶ、というのは大切な事だと考えています。

こうしてソロコンテストに関わるようになり、この3年ほどはレッスンをした生徒さんがだいたい本選まで行くか、あるいは審査員特別賞を戴くくらいまでは持って行けるようになりました。一昨年には本選で金賞まで受賞する快挙を成し遂げた生徒さんもいます。だいたいソロコンテストを受けたい、という子はこちらが道筋を示すと必死に、真剣に練習に取り組んでくれるので、こちらとしてもやり甲斐がありますね。

いずれにせよ、今後もこうしてソロコンテストに参加するコントラバスの生徒さんは居るでしょうから、出来ればコントラバスの出場者がいる際はコントラバス関係者を審査に加えるなど、改善をお願いしたいところです。

こうなったら、ソロコンテスト向けの曲でも作曲するか、または思い切って僕の主催で「吹奏楽部のコントラバス・ソロコンテスト」でも開催してみようかな 笑